……さて。
 状況が少々悪化したところで、VIS……バーチャル・インヒュレート・スキルで再現していたクアットロさんのシルバーカーテンを消し、私は前線に飛び出した。
 リスクは承知していた。
 何故って、古い仲のチンクさんが落下してきたから。
 頭から落ちる勢いだったので、思わず飛び出してしまった。
 我ながら浅はかとは思いつつも、無事に受け止められた事にほっとしている。
 ああ、白衣がしょっと破けちゃった。
 まあ、そのための保存用と観賞用だからいいけど。
「チンクさんっ」
「アリオン……私は、いったい……」
「ダークなアギトさんに乗っ取られてたみたいで、でも無事で良かった」
 チンクさんの乱れた銀髪を整えながら説明する。
 ……ふと、出会った時から妹が出来たみたいでちょっと嬉しかったりするんだ、と思ったけど、よくよく考えたら出会った時に言って不機嫌にさせったような、そうでないような……うーん、そこら辺はまだ思い出せてない。
「視界が不調だ、あなたの姿がぼんやりとしか見えない」
「強制融合の後遺症かな? 機械と肉を縫い合わせた体には耐えられるものじゃないよ」
「ふふ」
 チンクさんが小さく笑った。
「私は運が良いのだな。スバルに体をボロボロにされた時もそうだ。また致死に合い、そしてこうして還ってこれた」
「普段の行いの良さが出ているんだよ」
「だが私は前科がある」
「それでも姉妹は愛していた」
 悲観的になりそうなチンクさんを、私は私なりの言葉で、声で、必死にフォローした。
 それを感じ取ってくれたのか、チンクさんは再び小さく笑った。
「……アリオン、あなたはいつも私に優しかったのは、やはり博士の洗脳だけではなかったのだな」
「だって、妹みたいに感じていたし」
 あーあ、言ってしまった。
「やはりそれか」
 苦笑してくれた。よかった、不機嫌にならずに済んで。
「ところでアリオン」
「なんだい、チンクさん」
「我々は引かなくていいのか?」
「……大丈夫……そうかな?」
 簡易AFMで魔力から身を守ってるし、何よりアギトさんと合体したシグナムさんってば、フェイトさんにご執心の様子だし。
「それにほら」
 揺らめく黒い炎に指を差した瞬間、青い光が二人の間を貫き、フェイトさんの体を抱き上げた。
「闇が呼ぶ、血が呼ぶ、怨嗟が呼ぶ……悪を砕けと、僕を呼ぶ! レヴィ・ザ・スラッシャー!完ッ全ッ復ッ活ッ!」
 ……。
 想像以上の覚醒だ。
 あとは、果たしてコアに収まってくれるかどうか……。
「……アリオン、何を考えている」
 何を考えているって言われても……。
 なんて言ったらいいか……。
「砕け得ぬ光の再現、かな」
 言ってから、おおよそ科学者らしくない表現だと思って自嘲気味に笑ってしまった。 
「さてここから先、どうなるか分らないから私のラボに戻ろうと思うんだけど、どうかな?」
「賛成だ。どうせ例の強化ギプスから見えるんだろう? 戦いの様子は……」
「もちろん」
 あ、それと一つ確認しておかなければ……。
「それとね、チンクさん。私の仕事場にはうるさい妹分が一人いるんだけど、大丈夫かな?」
「ウェンディやセインほどではなかろう」
「ううん、その二人を足して声がデカくなった感じ」
「……」
 チンクさんは何かを飲み込み、小さくと頷いた。
 

 ◇

 ◇

 ◇

 ほいっしょ! よいしょ! うんしょ!
 ダーク・シグナムからの攻撃を避けるながら、僕はこれからどうするべきかを考えていた。
 正直なところ、今、フェイトが完全にお荷物なのだ。
 速さでどうにか愚鈍な炎から身を避けさせているけど、いかんせん攻撃にシフト出来ない。
「ねえ、雷刃」
「レヴィだ、レヴィ・ザ・スラッシャー」
「あ、ごめんね」
 すぐ謝るんだな、コイツ。
「レヴィ、少しだけお話、いいかな? シグナムに勝つ方法のお話」
「……訊くだけ訊いてやる」
 自分が弱気になった姿を観ているみたいで、なんか不愉快だ。
「ここに入れるかな?」
 そう言い、胸にあるバルニフィカスの待機形態にそっくりなエンブレムを指す。
「バカを言うな! せっかく自由になれたのに、どうしてまた封印されなきゃいけない!」
「別に封印するわけじゃないよ」
 優しい声でそう言われ、気持ちが一瞬穏やかになる。
「私の魔力が安定しないのはあなたに供給しているから。だから、この装甲を使って循環させて、お互いを安定させるの」
「そうやって」
「なんなら、この装甲を通して、私を体を使ってくれてもいい。アバランチ、出来るよね?」
『むしろその方が勝ち目があります』
「……どうしてそこまで身を賭せる」
「あんなシグナムに、私はきっと優しさが邪魔して本気を出せない。それにシグナムだって、本当はああして闇のかけらの悪意を集約させたんだと思う」
「……意識を持つって、面倒なんだな」
「うん、でもさ、楽しいこともあるんだよ」
「……」
 僕はためらった。眩しい笑顔は闇の力と相容れないと思ったはずなのに。
 その時、黒い刃が肩を掠めた。
 ……どうせやらなきゃ、自由はないってことか。
「……その赤い装甲、カッコいいよね」
『お褒め頂き光栄です、レヴィお嬢様』
  ……しかもなんて有能そうなデバイスなんだ!
「よし、乗った!」
『それでは補助動力でAFMを展開し、その間にパッケージングします。それまでフェイトお嬢様、しばし相手の物理攻撃を……』
「うん、頑張るよ」
「これを使うといい」
 そう言い、バルニフィカスを渡す。
「仕様はキミのものと大差ない。どうせ入ったら僕の使う体だ、だからそれで体を守れ」
「……りょうかい」
 優しく微笑むな、鬱陶しい……。
「バルディッシュ、レヴィを取り込んで。権限も一時的に彼女に預けるけど、いい?」
『Yes,sir』
『AFM、最大出力で展開します』
 七色の光が僕らを包みこみ、バリアのようなものを形成する。
 そして胸の金色の光が煌き、僕に浴びせられた。
 こうして見えた景色は……。
 AMFとやらの影響で、公園の中で膝を付いているダークシグナム。
 僕は両腕を見た。
 赤い装甲に包まれ、片手にはバルニフィカス……。
 長くて青いお気に入りの髪は相変わらずだけど、おまけに大きくなった胸部……。
「ふ、ふふ……」
 どうやら合体は成功したみたいだ。
 ……気分が凄く高まってきた。
「超越合身完了! スカーレット・レヴィ、いざ参る!」
(は、恥ずかしい……)
 なんだよ、フェイト、こういうの嫌い?
 カッコいいのに。
「ちっ、まさかそんな隠し玉があるとはな……!」
 ダークシグナムが剣を正眼に構えて、悪役らしい言葉を発している。
『動力コア、安定……これならばお二人の体力が続く限り動けます。どうなさいますか? レヴィ嬢』
「じゃあ、まずはさっきシュテルを無力化させた光を展開して、インなんとかスキルで圧倒してシグナムを消耗させる!」
(アバランチ、AFMの展開とISのエミュレート、お願い)
 よく分らないけど、フェイトが通訳してくれてるみたいだ
『かしこまりました、AFM、最大出力。及びIS12を用意致します』
(バルディッシュ、バルニフィカスにライオット・ザンバーのフォームを教えてあげて)
『動きはアーマーからの補助ではなくイメージを直接頭に送ります。戦いの勘がよろしいレヴィ様ならばその方がよろしいでしょう』
(私もサポートする)
「いいよ、そのライオットってやつの形だけ教えてくれれば」
 僕を甘くみるなよ、っと。
 すると背中からぶわっと何かが出るのを感じた。
 おまけにバルニフィカスが雷刃滅殺極光斬モードになったと思ったら、二つに割れて……そ、双剣!でっかい双剣!すごいぞ!かっこいいぞ!バルニフィカス!
 しかも僕の魔力光に併せてなのか、青くなってくれている!
「くっ、刃が届かん……!」
 なんか、肩のアーマーから勝手にレーザーが出てシグナムを牽制してくれている。
 すごいなぁ、お前。
『先ほどフェイトお嬢様が使っていたレイストームの利用方法を勉強させて頂きました』
(というか……こんなに質量兵器使って、大丈夫、かな……)
『セレナ氏とノア氏の共同結界、さらにマスターの情報操作が完璧ですので問題ありません』
「ごちゃごちゃうるさいな、もう。ほら、完成したよ」
 そう言い、僕は双剣を頭の上で交差させた。
「行くぞ、シグナム! 二天稲妻流の冴え、とくと見よ!」
『データにない武術です。フェイトお嬢様、ご存知で?』
(多分、彼女の即興)
「ごちゃごちゃうるさぁーい!」
 と、敵よりも内なる二つの声に対しての怒りを合図に、僕は飛んだ。
 極めて低く、地面を背に、すれすれに。
 これならば、シグナムの攻撃方法を限定できる。
「小癪な!」
 横にずれて下に半円を描くように剣を薙ぐ。
 もちろんそんなのは予想済み。わざと止まって片方で攻撃を受け、腕の装甲でブーストを利かせて頭上から叩き切る。
 けれどもそれは剣の鞘で受け止められた……どころか、弾かれてどっか飛んでちゃった。
 さすが僕の打撃、軽いよなぁ……!
『IS 7,簡易エミュレートします』
(レヴィ、シグナムに目標を併せて念じて!)
「常にやってるっての!」
 ま、助言は嬉しいけどね。
 言われている間に片方の剣でシグナムと斬り合う。
 僕の素早い斬撃を防ぐのがやっとみたいだけど、こっちはスピードで押すのが手いっぱい……けれど。
「とどめだ、烈火の将ォーッ!」
「ぬっ!」
 大きな声を出して威嚇。
 そこから蒼雷剣と化したバルニフィカスを突き出す。
 狙いはシグナムの腹部だ。
 けれどそれはフェイク。
 僕は素早く前へ倒れこみ、シグナムの胴を両腕で締め上げた。
「なにを!」
 そして僕の背後から飛び出した、もう一振りのバルニフィカスがシグナムの胸に襲いかかった。
 へへ……ちゃんとリンカーコア、狙ってやったもんね……!
「がっ……!」
 肉を裂く音が頭上で響く。
 同時にシグナムの剣が地面に堕ちた。
(シグナム……!)
『フェイトお嬢様、恐縮ですがこのままブラックアウトに追い込みます。少々耐えて下さいますようお願いします』
 胸のアーマーが輝き、中央にある金色のバルニフィカスもどきが輝く。
 お、これはまさか……。
 背中からの七色の光が閉じたとき、僕は感じた。
 そういうことか、と。
「今度こそホントのトドメ! 蒼金融合(そぉーごんゆぅーごぉー!)! 電・雷・砲!(ゴウッ!ライッ!ホウッ!)」
 ほとんどゼロ距離から魔力の塊をレーザーのように、シグナムの体にぶち当てる。
 射出は長く続いた。シグナムの体を使って太い木を数本折り、一際太い木にぶつかったところで停止した。
『意識喪失を確認。我々の勝利です』
「ちょっと呆気無さ過ぎない?」
(レヴィの機転のお陰だよ)
 うーん、自分の声に褒められたみたいで気持ち悪い。
「いや、奴はブラックアウトをわざと狙ってたね」
 あ、セイン姉様が地面から生えてきた。
「やっほー、セイン姉様。どうこれ、カッコいい?カッコいい?」
 両手を上げて赤いアーマーを来た僕を見せつけてやる。
 もちろん両手にでっかい剣を持って。
 ……って、あれっ、もう片方のバルニフィカス、もどってきてる……?
「しっかしすげえな、そのアーマー。まさかセッテのISまで、ここまで再現出来るなんて」
 なるほど、ISのお陰なのか。
『私もスカリエッティ氏の研究過程で生まれたものですから。ちなみに貴女やノーヴェ嬢のような複雑なISは再現出来ません』
「あたしのレアスキルを簡単に真似されたら困るっての」
 セイン姉様はむっとして、だけど笑顔を交えて答えた。
「それよりセイン姉様。さっきの『わざと』って、なに?」
「さあ? 頭の中で王様が呟いてたから。だから警戒しないと……」
『強い魔力反応を確認』
「な?」
 な?……って、僕も今ビビっと来たってば……。
 どす黒い魔力、怨嗟しか感じ無い、悪意の塊みたいな……。
 あの暖かい血と闇のモノとは別の何かが……。
「ぞっとしねえよな、闇の書の闇の悪。どんだけループするんだって言いたいところだけど、ここで絶ち切ってやろうじゃん」
 そう言い、セイン姉様がぎゅっと拳を握る。
 ……あれっ、セイン姉様、腕が……生えてる……?
「王様、預かった力、使わせてもらうぜ!」
 そう言うと、セイン姉様は握っていた拳を解いて、そして、絶対に持っていないはずのものを、手にした。
 それは急に、そう、突然、現れた。
 王様がいつも持っている本……。
 砕け得ぬの闇の……本体……?
 セイン姉様が、なんで?

 ◇

 ◇

 ◇

 チンクさんを抱えて姿を消したまま、私は自分の仕事場に戻ってきた。
 白で揃えた整然とした無機質空間、落ち着くね。
 チンクさんは……寝ている。
 このまま寝ていて欲しいな、出来れば。
「おかえりなさいませ、お姉さま♪」
 勝手に住み着いていつの間にか助手になった言動さえマトモならば。
「ノアさん、気持ち悪いよ」
 わざわざ声までつくって。
 まあ、気にしても仕方ないので、チンクさんを私が仮眠で使うソファに置いて、成り行きで参加してしまった案件の現状を確認することにした。
「ノアさん、状況はどうだい?」
「いい動きしてるよ、フェイトさんと合体したレヴィちゃん。ん? レヴィちゃんが合体したフェイトさんかな? まあ、とにかくスカーレット・レヴィちゃん。スピードで押してる」
「それじゃフェイトさんと変わらないじゃないか」
「でもアバたんのVIS(バーチャル・インヒュレート・スキル)でライオットの再現出来てるのッスよ、ほれ」
 そう言い、ノアさんは観ていた中空ウインドウを大きくした。
 すごいな、ディードちゃんのISでライオット・ザンバーを構築とは……。
「この視点はセレナさんの監視モニタと同期しているのかな?」
「正解。向こうのチームも結界維持するの大変そうだよ。レヴィちゃんと合体したフェイトさんの魔力は倍増どころじゃなくて、逆にアバランチのAFMで抑えてる感じ。もちろんそれに擬似魔力も強化されちゃってるから、こっちで支援してるトコ」
「情報統制はどうかな」
「アリオンのお兄ちゃんがアコースさんに土下座して協力を得て、どうにかなってるって感じ」
「あの兄さんが頭を下げた?」
 頭を下げる前に茶化してけむにまく兄さんが?
 しかも土下座で?
 観たかったなぁー。
「そらシグナムさんもフェイトさんも六課時代の恩師だもん。結果として私を紹介してデートまで持ち込むことで決着したけど。私もイケメンさんとお近づきになれるなら幸いんぐ♪」
 ……アコースさんが一番損する取引だ。さすが兄さん、やることが汚い。
 バレたらまた出世が遅れるね。
「なんて言ってる間に、決着ついちゃいそうだよ」
「あ、本当だ」
 ライオット・バルニフィカスの片割れが見事に暗黒シグナムさんの胸……というか、擬似じゃない魔力光で貫いている。
 私の目が確かならセッテちゃんの能力を再現されたのをおっきいレヴィちゃんが上手く使ったような、そうでないような。
 まあ、あれだけの魔力ならわざわざIS使わなくても操れるだろうし。
 いずれにしても興味深い。
 別のデバイス……この場合はバルディッシュだけど、それを経由してマテリアルをコアに据えアバランチの安定した動力を確保出来たどころか、フェイトさんとシンクロするとは。
「ちょあ! アリオン! これ見て!」
「なっ……!」
 そのコアからずいぶんと太い魔力光……いや、もはや砲撃だね……魔力砲が射出されていた。
「金色だから間違いなくフェイトさんだよね、大丈夫かな……」
「多分、ブラックアウトしていると思う。これじゃ完全にレヴィが乗っ取っちゃうね」
「念のためいつでもアバランチで制御出来るようにしておいて」
 そのための保険なわけだし。
 私はくるりと反転して、ソファの方へ向かった。
「アリオンはなにすんの?」
「白衣の着替えと、かつての仲間の応急処置」
「でもさ、そんなヒマあるかなァ……」
 意味深な反応をされたので、私は中空に浮いているモニタをざっと見渡した。
 一瞬途切れたシグナムさんからの魔力反応が、突然膨れ上がっているグラフを確認した。
「なんだこれ……!」
「シグナムさんのブラックアウトで取り憑いていたものが開放されちゃったんじゃない?」
「それしかないよ」
 ……レヴィちゃん、ちょっとやり過ぎだ……。
 かくしてシナリオは私が託されたシナリオはシグナムさんが描いていたものの中で、最悪のケースへと発展した。
 シグナムさんの中で捕らえてじっくり弱らせていくはずだったのに……。
 ……まあ、最悪のケースなので、保険がないこともないわけだけど。
「ノアさん、アバランチと通信繋いで。セインちゃんにも聞こえるように」
「ほいさ」
 アバランチとのオンラインを確認し、私は深呼吸をしてレヴィちゃんに語りかけた。
「ブラックアウトで決着と思ったら、状況は思った以上に悪化しているようだね」
『デカ女!』
 そこら辺は変わってないみたいだね、よしよし。
「やあレヴィちゃん、暫く見ない間に大きくなって」
 可愛いので思わずからかってみたくなった。
『あれ、どういうことだよ!』
「君たちから搾りとれた『悪』の要素だよ。シグナムさんが自らを身を犠牲にして集約させたんだ。けれど、計算以上の悪意……いや、シグナムさん自身の悪意も加速して、ああなっちゃったのかな」
 とても推論だけど、まあだいたいあってるだろうね。
 多分、シグナムさんの中にあるフェイトさんへの複雑な想いを逆に利用されたんだ。
 ……そう、シグナムさんだって完璧じゃない。
 自覚があったからこそ、今回の展開を想定していたわけで……。
『なあ、アリオンさん、あたしら、どうすりゃいい?』
 おっとセインちゃんも元気そうで何より。
「そりゃ切ればいいだけだよ」
 私はあっさりと答えた。
『烈火の将ごと、か?』
「うん」
 他にないしね。
『今さらそんなバッドエンドで納得出来るか!』
 やっぱりそうだよね。
「でも他に方法は……」
『あるよ』
 セインちゃんが私の口調を真似するようにあっさりと言った。
「今度はあたしが、その悪意を飲み込む」
 そう言って、レヴィにちゃんに一冊の本を見せる。
 まさかそれは……闇の……書……?
 だとしたら!
「ノアさん、またちょっと行ってくるよ。チンクさんのこと、頼むね」
「慌ただしいですなぁ、間に合いますかなぁ」
 間に合うさ。
 だって私の魔力変換資質は……。
「兄さんにメッセージ送っておいて。『デバイス壊したらゴメン』って」
「それって、私らの種族伝来のデバイスなんじゃないの?」
「……伝説はまた造ればいいさ」
 そう言って、私はさっさと出て行った。
 無骨で野暮ったい鋼鉄の棒を手に持って。
 このあとは……きっと風が教えてくれる。



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初版:2011/6/10

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