…ん?
 なんだ?
 あたしが、勝手に、動いてる?
 ……わーお!
 なんなんだよ、この感覚!
 目が覚めたと思ったら、なぜか体が別の奴にしきられていた。
 なんつーの、視覚とか触感とか、それら全部感じてるのに、出てくる言葉とか行動はあたしのものじゃないっつーか……つーか、だれだよ、このえらそーなあたし。
 雷刃は「王」って懐いてるし。
 ……いや、知ってますけどね。
 なにせ我々が追い求めている欠片の1つなんですから!
 そうです。今あたしの体を支配されておられるのが例のマテリアルガールズの一人。
 闇統べる王。
 問題は!
 いったいどうして!
 あたしの体を!
 使っておるのよ!
 と、いうことです。
 戦闘機人だって人間です。よって体を奪われるのは気持ち悪いし、ましてやそれをアトラクション感覚で体験させられるなんざ、長いことやってたら正気でいられないっての。
 なにより、なんでマテリアルDなのよぅ!
 しかしヤバいですぞ、この展開。
 星光の一味と合流されたらあたしの姿で悪行三昧じゃん!
 やべーよ、どうにかして主導権取り戻さないと。
「時にレヴィよ、先程、シュテルと烈火の将に襲われていたようだが、見間違えか?」
 気持ちなんざ無視して話を進められる。
「そこら辺の記録はあるんだ」
 んまっ!
 レヴィが見たことない笑顔をさらしておる、キィー!
 あたしの方が面白いじゃん!
 優しいじゃん!
 ノリもいいじゃんかよォー!
「襲ったというか、連れ戻しに来たんじゃないかな……シュテルのやつ、すっごく怖かったけど」
「あやつの真面目さは海をも飲み込む面が難だ」
 うわあ、この顔の感じ、笑ってるよ、あたし。
 邪悪な笑みを浮かべてるんだろうなぁ。
「けど、人質取るなんてらしくなかった」
 雷刃が俯いて呟いた。
 そっか、マテリアルたちにもそういう矜持的なものがあるのか。
「……レヴィよ、まずはうぬがいた場所に戻るぞ」
 王様がなんかいい案出した。
「いいのかな、アイツらがいたら……そもそも王に場所がわかるの?」
「いずれにせよ奴らを屈さねばならん、それにこの体、なかなかどうして使いやすい。記録も容易に覗ける。……ふむ、なかなか苦労しておるようだな、闇の器に相応しい」
 きゃー、プライバシーのしんがーい。
「行くぞ、いやまて、なにやら同胞の匂いがしおる」
 ん、そう言えばなんか感じたことのある周波数が……。
「そこか、塵芥!」
「待て、セイン!私だ!」
 草陰からチンク姉が出てきた。
 うーわ、おなつかしゅう!つっても数日前に打ち合わせで直接会ったけど!
 そして相変わらず小柄なのに、スッゴい威圧感。多分、眼帯と長い銀髪のせいだね。
「チンク姉か、何をしている」
 うーん、あたしゃそんな冷静な声、出さんよ。
「お前のアラートを感じ取っただけだ、出した覚えないのか?」
 出してました、ていうか勝手に出るのよ、屁のごとく。
「先程襲われたせいだろう、なぁ、レヴィよ」
「だね、おうぶはぽ」
 滑りそうになった雷刃の口を、闇統べる王様がカバーした。
 なんで王様の方が気を使ってるのよ。
「そうか、お前たちの方は懐いてくれたのか」
「それはもうして……姉妹と言えるほどにな、なあレヴィ」
「う、うん、ね、姉……様……」
 バカな、あの雷刃が顔赤くして姉様だとっ!
 ひいやっほふーい!王様サイコーッ!
 まあ、あたしが言われたわけじゃないんですけとね?ねっ!
「よくやった。ならばあとはシグナムと星光を捕らえなければ」
「生け捕り?アマいな、チンク姉。いっそ消し炭にしてやろう」
 バレるバレるバレるバレる!
「相変わらず短絡的だな」
 なに笑って納得してんだよチンク姉!
 あたしゃそんなに冷酷、いや、ドクターのとこに居たときは容赦なかったです、はいゴメンナサイ。
「だが相手は烈火の将と高町隊長の写し身だ、油断はくれぐれも……」
「こちらにはフェイトお嬢様とその写し身がいる」
「頑張るよ!」
 雷刃がピョンピョン跳ねていて可愛すぎる。よし、事が済んだら持ち帰ろう。
 なんて自己解決してるうちに、あたしの体は闇統べる王様によって宿舎へ移動させられるのであった。

 ◇

 セインたちが星光たちと邂逅を果たした頃、アリオンは寝室の八方に釘のようなものを刺していた。
 それらは上を向いている側が光ると、虫の羽ばたきのような音をだして姿を消した。
「まったく……こんな時に敵性反応だなんて」
 ため息をつき、右肩から下ろした髪の先を弄くる。
『マスター、フェイト様の容態について報告します』
「遅いよ、アバランチ」
 と、甘ったるい声で言う。
『そう思うならば医療系のフレームを追加してください』
 至って真面目に言葉を返す。
「んう、悪かったよ。だから早く教えて」
『しようのないマスターで仕えがいがございます』
「そゆのいいよ」
『ではお答えします、まずはフェイト様の魔力ですが、これは比較的安定しております。体力も問題ありませんでした。問題は神経がうまく脳の命令を処理し切れていないということです』
「処理、なんだ」
『ええ、間に不穏な物質が入り込んで阻害しています。いわゆる呪いですね』
「なるほど、文字通りの呪詛ということなんだ」
 アリオンはため息混じりに答えた。
「取り除くことは?」
『我々だけでは執務官を引退に追い込む恐れがあります』
「それは管理局にとって損失だよね」
『最短で治すには呪いの発生源に聞き出すしかありません』
「アバランチは機械なのに面白い事を言う。発生源に聞き出すなんて」
 アリオンはいたずらっぽく笑った。
『状況からして発生源は雷刃嬢では?』
「決めつけはよくないよ、可能性を消去していこう。何よりそれ自体が呪いかどうか……」
 そう言い、小さく息を吸ってゆっくりと立ち上がった。
「とにかく二人を迎えにいかないと。アバランチはフェイトさんのこと、頼むよ」
 上品な声で伝えると、アリオンは小さな足音と共に部屋の外へ出た。



 闇。夜。黒。暗。影。
 光は照らすべき者がいてこそ生き、蒼き空など所詮は闇に映る作為の絵画。星空など闇夜の水滴。
 総てが覆う。全てを覆う。
 儚き光よ、跪いて我らに飲まれよ。
 我は闇。
 闇の書の闇。
 闇の中の、闇……。
「む……」
「どうかしましたか、将」
「疼いていた、私の中の光が」
「それで再起動が行われたのですね」
「星光よ、私は本当に信じていいのか、姿なき主の声を」
「闇に姿など無意味です」
「ならば、我々は何故姿を持つ?」
「光を散らすためです」
「ならば、何故貴様の名に光がある」
「……将、必要以上の自我があるならば、再び最適化を施しますよ」
「……」
「さあ、行きましょう。次の標的は……あなたがどこにいるかご存知のはずです」
「ああ、よく知っている……」



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初版:2011/4/11

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