「そちらこそ、ナカジマ陸曹」
 低い声で答えたのはシグナムであった。
 右手に掴む炎の魔剣はギンガの正面にて悠然と立ちはだかっていた。
 その刃はゲートへ向いており、切っ先は緑色の触手ごと土へ突き刺さっていた。
「あわわ・・・」
 瞬間の美技を越えて生まれた二人の出で立ちを見て、ウェンディはふるふるとしていた。
「もっとすごいの、くる・・・!」
 オットーが静かに言う。
「ノーヴェ、妹たちと下がれ」
「あ、ああ・・・」
 言われてノーヴェは五人を背に、少しずつ下がっていく。
 代わりにスバルがゆっくりと前に出た。
「スバル、危ないッスよ!」
「大丈夫、少なくともみんなの盾にはなれるから」
 そう言い、スバルは胸元へ差し込んでいた青いペンダントを握り締めた。
「行くよ、相棒!」
『All right buddy!』
 空色の輝きが掌からもれ、スバルを包み込む。
 瞬時に収まったのち、白きバリアジャケットに身を包んだスバルが姿を現した。
「私も一つ、手を貸そう」
 言いながら、チンクがシグナムの隣に並び立つ。
「手合わせするつもりだったが、まさか共に戦うこととなろうとはな」
「この騒ぎが終わったらでもいいじゃないか」
 シグナムの無愛想な言葉に、チンクはあっさりとした笑みで答えた。
「・・・残念ながら手軽には終わらんぞ、私の予想が正しければ」
 ニヤリとしながら、シグナムは答えた。
「嬉しそうだな、お前」
「シグナムだ。チンクよ」
「私の名前、覚えていてくれたか」
 のんびりとした声で、チンクは言った。
「なんだか嬉しそうだ、二人とも」
 白銀と桜色の背を見ながら、ディエチが呟く。
「こっちです」
 と、進言したのはディードだ。
 手を地面と水平に上げて指差した方には、ベルカ文字で「非常口」を示すドアが戸を広げていた。
「逃げるしかねえのかよ・・・!」
「ノーヴェ、今はそれしかないッス」
 ウェンディがニンマリとしながら、ノーヴェの首を腕でロックして引きずる。
「そんじゃあスバルー、あとはよろしくッスー」
「よ、よろしくって、ちょっと!?」
 ウェンディをしんがりに、すでに非常口の奥へと入った少女達は、ガコンという音と共にこの場と遮断された。
「大丈夫かなぁ」
「それはこっちのセリフよ、スバル!」
 叫びと共に、鋭い光線がスバルへ伸びる。
 一直線のそれを、スバルは身を捩らせてなんとか避けた。
「お出ましか」
 シグナムが低く呟く。
 チンクも身を構え、臨戦を感じる。
 ギンガなど、緊張感からか、早くも汗を一筋流していた。
「スバル、チンクの横について備えろ!」
「はい!」
 スバルは言われるがまま、チンクの横へと並んだ。
「四対四・・・頭数としては上々ですが、勝算は私達にありますよ、シグナム副隊長・・・♪」
 妙にツヤっぽい声と共に現れたのは、深い緑色のボディスーツをまとったティアナであった。
 次いで、虚ろな目をしたキャロとエリオが左右の斜め後ろに現れる。
 それを挟むように、雷色の髪をした女性−フェイトが不敵な笑みを浮かべて後ろからゆっくりと現れた。
「シグナムさん、これ、なにがどうなってるんですか・・・?」
 ギンガが険しい表情で訊ねる。
 するとシグナムは、フェイト以上に不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「さあな、ちょっとしたアドリブだろう?」
 言い放つと、シグナムはレヴァンティンを正面にし、ゆっくりと下段へ構えた。
 握り締める拳が、武者震いに満ちていた。

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