ダン、ダン、ダン、ダン!
 四つの人影が、樹木の壁にぶちあたる。
 ギンガ、シグナム、チンク、スバルであった。
 各々、出血を伴う大きな傷が一つか二つ受けている。
 それは彼女たちが劣勢であることを物語っていた。
「・・・さすがは共通の意識体・・・チームワークが絶妙すぎる」
 シグナムが苦笑いをしながら、ギンガとチンクへ聞こえるように言った。
「対してこちらは即席のチーム・・・しかも一人は力を出し切れていない」
 と、チンクが隣にいるスバルへ片目を向ける。
「・・・だってそんな、戦えるわけ・・・」
「ならばそこで休んでいろ。多少ケガをさせてでも、あのバカどもの確保、確実に成功させる」
「えっ・・・」
「頼むぞ、ゼストの後継・・・私も少々、動きが鈍い・・・」
 スバルの戸惑いを遮るように、チンクが言った。
「跡継ぎ・・・か、チンク、残念だが、私は私だ」
 まっすぐと立ち、シグナムは正面に並ぶ敵を見た。
「・・・アギト、すまないがアレを頼む」
「おうっ、やっとか!」
 ピョン、と、シグナムの胸元から飛び出したのは蝙蝠の翼を持つ少女であった。
 その背は掌に乗りそうなほどで、後ろで二つに結ばれた真っ赤な髪と鋭い目が妙に攻撃的である。
「・・・訓練どおりに、やれるな?」
「訓練以上にやれるさ」
 シグナムの問いに、アギトがゆっくりと浮かびながら微笑む。
 その足元に、シグナムはゆっくりと手を伸ばし、開いた。
 アギトはその手に静かに降り立つと、腕を組みながら、叫んだ。
「ユニゾン・イン!」
 同時に豪炎が二人を包み、爆音が轟く。
 これぞ、シグナムとアギトによるユニゾン・イン・・・すなわち融合合体だ。
 初めて二人がユニゾン・インをした時は、せいぜい炎が上がる程度であった。
 だがその炎に激しさが加わり、さらに爆発までするようになった。
 ユニゾンの精度が上がったのか、それとも個々の戦闘力が上がったのか定かではない。
 ただ、はっきりとしているのは。
 ジャケットの上着がパージされ、炎の翼が激しく煌いていること。
 まるでシグナムの怒りが形になったかのように。
「ふぅ・・・」
 桜色から青紫に変化した騎士服を軽く正し、シグナムは薄紫に染まった目を、金色のライバルへ向けた。
「そうだな、相手はお前だけではなかったな・・・」
 チラリ、とエリオとティアナ、さらにキャロをも睨みつける。
 さすがの四人も、これにはたじろいだ。
「・・・ああ、そうか。植物に炎は大敵だな。だが安心しろ、お前達が使っているその体は、人間だ」
「シグナム副隊長、なんでわざわざ敵に塩を送ってるんですか・・・!」
 スバルは怒りで痛みを堪えながら叫んだ。
「スバル・・・古い言葉、知ってるのね」
 と、ギンガが壁を背にもたれるスバルの隣へやってきた。
「ギン姉、笑ってる場合じゃないよ! 早くティアたちを・・・!」
「大丈夫。多分、シグナム副隊長は待っているの。全てを丸く収める手段が揃うのと、スバルの気持ちが甦るのを」
「待ってるって・・・それじゃ手遅れになりかねないじゃない!」
 今にも泣きそうな声で、スバルは叫んだ。
「案ずるな、スバル・・・そろそろ妹たちの準備が整う・・・」
「えっ・・・妹たちって・・・」
「そうだ、妹たちだ」
 凛然とした声を、チンクは鳴らした。
「だからスバル、自分の中で勝手に泣いて、勝手に言い訳している場合でもないだろう?」
「けれど、あたしは・・・」
 ウジウジと、スバルは顔を俯かせた。
「・・・私には本気で殴りかかったのに、ねぇ」
 と、意地悪そうに微笑みかけたのはギンガだ。
「それは・・・あの時のノリというか・・・」
「ならばいいじゃない、あの時のノリのように、ね?」
「そうだ、早く行け。それに今回、この場にいるのはお前だけじゃない・・・」
 チンクが立ち上がり、パンっと手と拳を合わせる。
 ギンガもペンダントを揺らし、瞬時に戦闘服を身に纏った。
「・・・ギン姉・・・チンク・・・姉・・・」
「・・・お前もそう呼ぶのだな」
 チンクは照れくさそうに笑った。
「いいだろう。・・・ギンガ、あの小さな召喚士を制圧してシグナムのフォローだ。それだけでずいぶん違うはずだ。スバル、お前はティアナだ。・・・やれるな?」
「・・・うん・・・!」
 スバルはゆっくりと、力強く立ち上がった。
 そして強い視線を、新たなる姉と共に、敵へ向けた。
「よし・・・行け・・・獄中の妹たちの手を煩わせてくれるんじゃないぞ」
 その言葉を、タイプゼロの姉妹は背中で受け止め、悠然と前へ進んだ。

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